lensdiary

日記。観たもの、聴いたもの、読んだものについて思い浮かんだこと。感想はネタバレを含んでます。

映画『そばかす』を観て

Ace week (10/22〜28)が始まりました。

acearobu.com

 

前までこのようなテーマを積極的に書いて、恋愛感情や誰かと身体を繋げる行為をしたくないけど仲良くしたい、友情を重視したパートナーは欲しいけど見つけられないと悩んでる人の解決のきっかけになればいいなと考えていましたが、セクシュアリティをオープンにして命を奪われることが現実で増えている状況に、恐怖と不安はより大きくなって書けなくなってます。

 

あと、その名称を理由に自分の言動が他の人を攻撃していないか、自分の心に変に蓋をしているのではないかと考える時間も増えました。

ですが、前のTwitterで自分のことを書いて繋がることができた方々が、創作で表現されたりイベントを開催されていたりと頑張られている姿勢に勇気をもらい、せめて啓蒙週間はこのテーマのことも書いていこうと思いました。

本当に微力ではありますが、いつかアセクシュアルの感覚を持つ人もいることが当たり前とされる世の中になってほしいと願ってます。

 

最近、似た感覚のキャラクターが登場するドラマや映画、コミックなどが増えてきました。

その中で私が観た映画の感想を再投稿します。

明確にaro/aceとはセリフに出てきませんでしたが、その感覚に近い人の日常を描いた映画『そばかす』の感想です。

notheroinemovies.com

 

youtu.be

 

 

 

恋愛や性的指向がない、または、わからない、気持ちの向け方が人と違ってモヤモヤしたりなど様々な感覚を持つ人の日常が映画になったことが、何よりも一番に嬉しかったです。

私はデミアロマンティック/デミセクシュアル(私の場合は信頼感を重視した感覚)を自認しているので、どうしても自分の過去と重ねる視点無しでは見られませんでした。

主人公の日常は、セクシュアリティを抜きにして、恋愛や結婚を自分で選択することを重視して生きている人にも共感できるやり取りやシチュエーションがあると思いました。

 

佳純のセリフのほぼ全てと三浦透子さんの佇まいや目の雰囲気、恋バナにわかる振りをする曖昧な返事などわかるわかると頷いた場面がたくさんあり、海岸や屋上で風に当たりながら座る表情も見ていてとても気分が落ち着きました。
(宇宙戦争トムクルーズが走る姿は私も好きです笑)

 

家族や同僚のセリフ、口調に対する佳純の反応は、私も感じたことのある息苦しさを思い出しましたが、目に見えてわからない閉塞感や気持ちを映しだす為に、敢えて周りの人の"普通"とされる言動をより強調したのかも。

コメディ調でクスッと笑える場面もあり、お母さんも妹も木暮くんも、どの人も自分の気持ちに正直だったので見終わった時にはこの作品のキャラクター全員好きになってました。

 

真帆とデジタル紙芝居を作った場面や、チェロを使って気持ちを音楽で表現したのがとても良かったです。

恋愛感情が他の人に向かないからといって、誰かを大切に思う気持ちや愛情が無いのではないことを、音で伝えた場面は心に深く響きました。

 

三浦透子さん、三宅弘城さん共に普段ミュージシャン、バンドで活動されている方なので、とても説得力がありました。あと、真帆を前田敦子さんが演じられたのが本当に、本当に人間味が感じられてとても良かったです。

劇伴と主題歌も、優しさ、暖かさや疾走感、開放感があって、ものすごく好きになりました。

 

この映画を観て、初めてアロマンティック/アセクシュアルを知ったと書かれている感想を見つけて知ってもらえた喜びと同時に、佳純のセリフで説明された感覚がステレオタイプになってしまわないかの不安も感じました。

スタートラインではあると思いますが、その名称を自認している人の中でも、感覚や考え方、好みの違いは人の数だけあるので、佳純は「性欲がない」とはっきり言い切ったけど、それはあくまで佳純の感覚だとわかるような場面があればグラデーションがあることも伝わりやすかったかな、と思ってしまいました。

 

恋愛感情を持つ人全てを受け入れたくない訳ではなく、佳純が木暮に対して思っていたように、性別問わず長く友人として一緒に過ごしたいと思う人に出会うこともあり、お互いにもう少しどう思っているのかを言葉でも確かめることが大切だと、映像を見ると尚更考えさせられました。

北村匠海さんの天藤がどんな感覚を持つ人なのかもう少し見たかった気持ちと、佳純がAro/Aceの言葉に出会ういきさつも気になります。

 

ラストシーンの爽快感や心地よさは、見てる私も走り出したくなりました。映画館を出た時は、なんとなく足取りが軽くなった気がしていました。

三浦透子 / 風になれ [Official Music Video] - YouTube

 


どこかで恋愛感情がわからない、周りの人と細やかな感覚のすれ違いで人間関係にモヤモヤしてる方へ、どうぞこの物語が届きますように。

 

 

 

【脚本家が語る】他人に恋愛感情を抱かない女性が周囲と向き合いながら自分自身を見つめる姿を描いた映画『そばかす』原作・企画・脚本アサダアツシが語る!! 活弁シネマ倶楽部#257 - YouTube