lensdiary

日記。観たもの、聴いたもの、読んだものについて思い浮かんだこと。感想はネタバレを含んでます。

映画『沈黙の艦隊』を観ました

 

映画『沈黙の艦隊』を観ました。

 

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109シネマズ大阪エキスポシティにて

 

見るならIMAXレーザー/GTシステムで見たかった。正方形に近いスクリーンが大きい(ビル6階分相当)、移動感覚を体感できる、音が良い。

https://109cinemas.net/imax/imax-with-laser.html

 

視覚と聴覚で潜水艦に乗ってる気分になりたい。音波聞き分け対決を素晴らしい音響で体感したい。キャストさんの表現を巨大スクリーンで堪能したい。調べたら上映時間が自分の行ける時間だった→即予約。

上下カットなしでフルスクリーンで良かった。

ストーリーはさておき、映像を堪能できて、わたしにとってはここで観て正解でした。

 

空から見た街並みや水や線、潜水艦などのフォルムと動きが心情に響く吉野監督の"絵"が、やっぱり面白い。ハケンアニメ!の時も思っていたんですが、"モノ"であっても、そこに人の手が携わってる、モノの向こうには人がいる、人の想いがあると感じられる映像がとても面白いです。

 

空母と一触即発の場面は、とても迫力がありました。本物の潜水艦側から海上を移動して見える場面が、一緒に乗っている気分になれて楽しい。艦隊戦や戦略、戦術を繰り広げる展開が好きなので、海江田、深町、米軍のそれぞれの艦内の違いを映しながら情勢が変わっていく様子にテンションが上がりました。

 

交響曲を使った海中戦の映像は、『銀河英雄伝説わが征くは星の大海』が好きで頭に染みついてるせいか、やっぱりワクワクして見てる自分に気がついて心の中で苦笑い…。

 

海の中では音が肝。ソナー員の技が光る展開が楽しめてとても良かった。

私が見た回では、微細音を集中して聞く場面で、観客席で誰もスマホの着信音やバイブ音、ポップコーンかさかさ音をたてなかったので集中できてホッとした(大事な場面で着信音響くことがよくある)

 

 

ストーリーは、むかしむかし原作を読んでいた時ちょっと苦手だと思っていて、映画を見て何か変わるかなと考えていたけど、見ながらやっぱり苦手だと思って…。国のために…というのが全面に出ていると、嫌だなぁ…と思ってしまいます。すぐに心の中で銀英伝ヤン・ウェンリーを呼び出そうとしてしまいます。

殺し合いは反対ですが、人が争いを繰り返してる歴史から逃れられない現実としてどんな時代になっても起こり得る、いま現在広がってると理解しています。

映画の中にあった、対話の為に"力"が必要と言ったセリフがとても印象に残りました。ここがこの物語のこれからの重要なポイントになってくると思ってるんですが、ガチファンじゃないので解釈間違えてるかもです…。

それでも、映画オリジナルキャラの入江蒼士に起こったことや、若い隊員が寝室で雑談する場面に流れる不安感や虚しさを見ると、老若男女どの人も犠牲になるのは悲しいけど、特に若い人が命を失うのは言葉にならない悲しみと無力感が込み上げてきます。

 

入江蒼士さん、お疲れ様でした。

やるべきことを一人でこなして、あの結末を迎えた姿を見ながら、実際の災害現場やどこかの戦闘中に一人で逝ってしまわれた方がその瞬間どんな思いをされていたのかと考えていました。やっぱり言葉にならない無力感が大きいです。

 

一人の命を切り捨てる海江田の選択は、全員失うことを避けた艦長としては正しい。でも深町は納得できない。

私には、逆を向いてる二人でも、どちらの心にもずっと蒼士がいると思いました。大沢たかおさんが演じる不気味な雰囲気の海江田も、切り捨てたことを忘れていないように見えました。

 

映画だけでは、海江田の才能と手腕はわかっても、不気味さが際立って目立ち、どうして他の乗員が海江田に着いて行くのかわかりにくいけど、入江蒼士が弟に海江田の魅力をクジラに例えて話す場面で伝わる作りでした。

どうして入江兄弟を入れたのかと考えて、全32巻分から伝わる海江田の面白さ(伝えたいことは大事なこと言ってるんだけどやり方が狂ってるとしか思えない)を、きっとシリーズ化する映画の序章だけで説明するのは無理があり、海江田と深町の対峙を軸に描いていくためのキーパーソンを置いたのかなと思いました。

(完成披露試写会の舞台挨拶で中村倫也さんがキーパーソンとおっしゃっていた意味と合っているかわかりませんが…)

 

蒼士から見た海江田の例えに出したクジラというワードを聞いた時、なんとなく潜水艦の映し方がクジラが海中で動いてるみたいだと思って見ていたので、ピタッと繋がりました。地球を一つの国にしたいと言う海江田が、世界中の海を泳ぐクジラのようだと伝えたいのでしょうか。

その描写は男のロマン的なものがありますが、そこに惹かれてついていって命を落とした人にしてみればたまったものじゃない。

狂ってる。

そんな人が一つの国を作ろうと動き回るのが恐ろしい。繰り返しますが、海江田が伝えたいことはとても大事なことだけど、でもそのやり方に違和感がある。

 

 

自分の考えがわからなくなるのですが、どうして銀英伝のラインハルトに嫌悪感を感じないのに、海江田には不穏さと恐ろしさと違和感を強く感じるのか。

比較ではないけど自分の頭を整理するために銀英伝を思い出して書きますが、ラインハルトは世襲ではなく才能ある者が権力を手にすることを示した。政権を握るため実行していく中で、才能がある別の人の意見も取り入れていく姿勢に読んでいて気持ちがすっきりできてやってることはえげつないけど好感が持てた。オーベルシュタインの助言を聞きいれて起きた悲劇以外は、戦略としてモヤモヤすることがなく、とても良い君主として読み進めることができた。

何だろうな、海江田から感じる違和感は。多くを語らず最後に実はこうでしたみたいなやり方にモヤモヤするのかな。私が掴みきれていない違和感に含まれる何かが、かわぐち先生が描きたかったことなのかもしれません。

 

やっぱり苦手な話だけど、艦隊戦をもっと見たいし、あの終わり方はバッサリ終わったな!?感が強くてこの後の展開を見たいので、次作も見たいです。原作と雰囲気がちょっと違う気がする玉木宏さんの深町がどうなっていくのか見たい。続きも配信だけにしないで、劇場公開してほしい。

海江田と深町と弟の心に蒼士がいるから、追加の回想シーンがあること、中村倫也さんが出演されることを願ってます。

 

沈黙の艦隊とノイエ銀英伝の、無事全話映像化を願います。

現実の戦争が収まりますように。映画制作や生活に影響が出ませんように。強く願ってます。

 

 

Adoの歌声とB'zの音が劇場に鳴り響くのを聴けて良かった!

https://spotify.link/76WuKKGKwDb