lensdiary

日記。観たもの、聴いたもの、読んだものについて思い浮かんだこと。感想はネタバレを含んでます。

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この感想は個人の趣味として記録したい衝動から綴る言葉で、著者様および公式様とは一切関係ございません。ネタバレ、有料会員向けの発言からの引用がNGの方はご遠慮ください。読んでも大丈夫な方はお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

THEやんごとなき雑炊を電子書籍でざっと読んだ。雑誌の誌面と違うフォントとデザインから、連載時とまた違った、より特別感のある料理本に見える。料理中とレシピのページは紙版で早く読みたい。紙質も気になるし。まえがきはこの前試し読みでちょっと読んだから、あとがきを読んだ。興味深いお話。ちょうど自分自身が記憶を記録すること、というか能動的な方々にとってのオープンなここの場所にクローズドな劇空間の感想を書くことを考えていたところだったので、中村倫也さんがある方法で料理から辿りつかれた記録についてのエピソードが読めて、私にとってとてもタイムリーなエピソードだった。

小説や漫画エンターテイメントとして特集している雑誌に載る雑炊レシピと、調理中の人の言動、その時の雑炊や季節から思われたショートエッセイ。

これを毎月読みながら、これは新しい文学への触れ方なような気がしていた。文学が何かを説明できないけど、ひとの心の揺れ動いた様子を言葉に残しているものと考えてる。いつか出展してみたいと憧れている文学フリマの公式サイトの説明を引用すると、「自らが〈文学〉と信じるもの」と書かれている。

ならば、私はこのTHEやんごとなき雑炊は料理本であると同時に文学を目と手指と脳以外の身体も使って"体験"できる本だと思う。さらに、このレシピを作った人たちが、SNSや番組で感想を伝え合う。本から、料理を通じて人が繋がる、集う瞬間を目撃できる。まるで仮想や現実でのフェスティバル感もある、とても面白い体験ができる本だと改めて感じた。

 

料理から何かを思い出すことについて、私が鍼灸治療を初めて受けた時に鍼灸師の先生から教えてもらったことに繋がった。長かった初診はほぼ問診で、特に生まれた時から何を食べてきたか、親の食事の傾向、病歴もじっくり聞かれた。その理由は、人間の身体は自分だけではなく、先祖から代々経験したこと、特に食べてきたものも蓄積されて今の自分の土台になっているとのこと。遺伝子で考えると摩訶不思議なことではないなと思って、納得できた。医療や科学に詳しいわけではないけど、何かを食べたり、見たりして、どうしてかわからないけど懐かしいと思う感覚になるのは、もしかすると遺伝子の中にある情報を呼び起こしているのかもしれない。もしそうだとしたら、あとがきに書かれた料理から自分が生まれて経験した記憶から何かを思い出すことは充分有り得ることで、20種類の雑炊を繰り返し作って食べるたびに、その時の状態によっても思い出すことが違う思い出を呼び起こすかもしれない。

 

これは、ますます面白いことになってきましたよ。

紙版を手に持って、その重みを体験できるがとても楽しみになってきました。宅配で届くのが待ち遠しい。

 

 

 

 

 

 

 

2023.3.29にボルラジで『自分の書いたことばや言動を人生のたしにしてくださる、ありがたい心の清い方々、そういう方がいらっしゃるのでちゃんと自分の言動、行動に誇りと責任をもつようにこころがけてる』と言われていたその心が、この一冊に込められていると思いました。

 

 

人生はしんどいことがあってもそれも含めて楽しい。

いろんな味を出汁、具材で美味しく炊いて、自分の脳に楽しく記録していきます。