2022.10.9 (日)
いったんホテルに戻って休んでいた時、Vaundy や ステージの様子がわからない場所から聴いたアントニオロウレイロの音、姿を見なくても音だけで惹きつけられる面白さを思い出していた。
目から入る情報量が減る分、音に集中できる。今まではエリア中央で目と耳と自分の身体も動かして楽しんでいて、この日みたいに音だけに集中したことがなかった。フェスなのにそんな聴き方どうやねんと自分にツッコミながら、ステージから距離を取るのは、時々難聴になるわたしには身体に負担が少なくて、モニターで姿が見えるあたりでちょうどいいかもしれない。
冷えた身体が温まって、再出発。梅小路公園に着いて、ステージエリア入場ゲートをくぐったところで、又吉さんの朗読が始まった。また後方上手側、植え込みあたりのぬかるんだ芝生エリアに入る。
又吉直樹(朗読)
偶然、又吉さん出演情報が発表される前にHDDの容量整理をしていた時、6年前にNHKで岸田さんと対談された番組や、お二人でベートーベンのすごさを語る番組の録画を残しておいたのを見直したから、何を朗読されるのか楽しみだった。
朗読の内容は、くるりへの又吉さんの思い出や想いをまとめた言葉だった。感極まってたので具体的なことを覚えていない。岸田さんのアコギの音が入ってきて、さらに感極まった。
前から、音楽フェスでも朗読や演劇ステージもあったら面白そうと思っていたので、朗読からくるりに繋げたのがとても感動的だった。
1.真夏日
どの曲もそうだったけど、ひとつひとつの音、言葉を丁寧に置くように奏でられた音に聴こえて、雨の隙間を突き抜けるようにとてもクリアでどこまでも広がっていくような音だった。
この場所に来られなかった人にも歌を届けようとしているように聴こえた。
まさか新曲で始まると思ってなかったから、驚きといろんな気持ちで頭がいっぱいになった。大型モニターに映る岸田さんや佐藤さんを見たら、この3年間を超えて、20数年分の気持ちが込み上げて立てなくなりそうになったので、一番後方の救護所を仕切る白い幕の真後ろに逃げ込むように場所を変えてしまった。ちょうど人もまばらで、座って聴いている人もいた。モニターは全く見えなくて、でも伸びやかな音はさっきまでいた場所よりも耳に深く届く。
2.東京
3.ハイウェイ
4.潮風のアリア
6.ばらの花
7.everybody feels the same
8.太陽のブルース
9.ブレーメン Bremen
10.奇跡
アンコール 宿はなし
最高のセットリスト。
歌声やコーラスは深く伸びやかで、ギター2本の音は空に向かって鳴き続け、ベースとドラムは歌うようにスイングしながらビートを刻み、ピアノやアコーディオンも転がって踊るように音の幅を広げて、全部の感情を歓びに包んだとても幸せな1時間だった。
ブレーメンを聴きながら、2021年配信開催で岸田さんが書いたメッセージの4番目、”音楽を楽しむことは、鳴らされているものが言い忘れていたことを拾うことができること” を思い出していた。
うまく言えないけど、2020年から起こったこと、いまヒタヒタと身近に迫りそうな不安の中で手放しに浮かれてばかりでいてられないと思いながら、誰かが想いを込めて作った作品に触れる時の意志と覚悟は今まで以上に強くなった気がしてる。
今回の音博で聴いたくるりの11曲と全ての出演者の方の曲と朗読は、当たり前と思っているものがとても貴重なものだったと実感できる、いま聴けて本当に良かったと思えたステージだった。
本当は拳振り上げて一緒に歌いたかった。歌詞を一部書きます。
『ブレーメン 外は青い空
落雷の跡にばらが咲き
散り散りになった人は皆
ぜんまいを巻いて歌い出す
そのメロディは街の灯りを
大粒の雨に変えてゆく
少年の故郷の歌
ブレーメン 君が遺した歌』
わたしは仕切り用の白い幕に向かって身体を揺らして全ての曲に浸って聴いた。途中でそっとまわりを見てみると、うつむいてかすかに頭を揺らして聴き入ってる人、テンション上がりすぎてしゃべりが止まらなくなってる二人とか、それぞれの世界にひたって身体を揺らして聴いていた。モニターが見えない場所だったけど、曲が終わった瞬間、みんな自然に大きく拍手していた。
奇跡と宿はなしを聴きながら、もう終わってしまう…と寂しさが込み上げた。
岸田さんと佐藤さんがまたねーと言うのを聞いて、心の中で、”ほな、またねー”と返しました。
京都駅を出たら、音博帰りの人や音博のことを知らない人たちも、いつもと違う色をしたタワーにカメラを向けていた。
また来年も参加したいな。来れるかな。がんばろ。