lensdiary

日記。観たもの、聴いたもの、読んだものについて思い浮かんだこと。感想はネタバレを含んでます。

ケンジトシ大阪公演を観ました

ネタバレありです。

 

 

 

 

 

 

 

ケンジトシ 大阪公演

2023.3.4(土)

昼と夜

サンケイホールブリーゼ

 

 

言葉がまとまらないけどとりあえずの感想

・シンプルな造りと直接伝わる感情

やっぱり劇場内に入ると実感が増して、たくさん伝わってきたものがありました。感動で頭がいっぱい。

舞台の距離が近くても遠くても、同じ目線のような親しみやすさがありました。

 

昼は1Fセンター前方で、夜は2F真ん中下手側あたりで見たのですが、2F席までビオラピアニッシモ音もキャストさんの生の声でのセリフもとてもクリアに届いてきました。マイクを通していない声は、耳にとても優しい聴き心地。シンプルな舞台の造りと必要最低限の音だけで、セリフと身体の動き以外はほぼ無音の世界。観てるわたしも、身体から出てしまう少しの音や服のこすれもノイズになるので緊張してました。緊張してる時に限ってちょっとお腹が鳴ってしまいました…。ごめんなさい。

 

(言えないのかもしれないけど携帯の電源は完全OFF推奨にしてほしい)

 

なんとなく配信(2.22東京公演)の時より、みなさんが、セリフの緩急、落ち着く言い方と早口でまくしたてる時のメリハリをハッキリと区別されているようで、テンポ感が落ち着いてしっかりお芝居を見せようとしている雰囲気でした。

 

・ケンジさんとトシさん

まだまだもっと長く仲良く過ごしてほしかった。聡明で楽しくて可愛らしいふたりの短い生涯はとても切ない。でも長生きされていても、その後に起こった戦争と地震は賢治さんには大きなショックとなったかもしれない。

 

ケンジさん、有名なハットと外套姿の賢治さんの写真から抜け出してきたように上手奥から登場すると、俯いて無言でゆっくりと土を踏みしめるように歩く。立ち止まって地面をジッと見る。中村倫也さんの声ももちろん好きなんですが、この無言なのに、立っているだけでそのキャラクターの背景に何があるんだろうと色々想像したくなる表現が面白くてたまらなく好き。

 

その後再登場しての雨ニモ負ケズの朗読、つぶやくように言われているのに一気に惹き込まれる。

 

トシさんとの、イーハトーブ菩薩のわきゃわきゃみたいな仲の良さとか、トシさんに対する絶対的な信頼感は、どんな言葉で関係性を当てはめようとするのが野暮だと思うぐらい純粋な心。だから余計に、ひとりになったケンジさんがトシさんがいないと気づいて、それでも探し回る姿や、憤ったり泣き叫ぶ声がとても切なかった。テンパタールの月、一言ごとためる"間"に、トシさんへの愛情と優しい気持ちがたくさん込められていて、うつむいて泣きながら言われた"ありがとう"の一言が一番心に響きました。本当に美しい心は、暖かさ、冷たさ、苦しい、楽しい、悔しい、全部含んでいるものだと、ケンジさんのありがとうを受け止めて、そう感じました。

 

黒木華さんが場面やセリフによって雰囲気がすっかり変わるのを目の当たりにして、途中から華さんからも目が離せなくなってました。昼公演を見た時は距離が近くて、気を失う瞬間の、人間が制御不能になって嫌な感じの倒れ方をする瞬間そのものを見た時、コントロールされてない人の身体の重さまで迫力となって見えてきました。

 

そのトシさんを必死で抱きしめて懸命に身体をさすり声をかけて励ますケンジさんと二人しか舞台の上にいないのに、白い台座と古びた紙か布のスクリーンのような背景布だけなのに、強風と雪が吹き荒れる冬の森の中に見えてきた。

 

自分がメンタル落ち込んで動けなくなった時に、黒木華さんのトシさんに「オラッ!」って勢いのある声をかけてもらい、倫也さんのケンジに「歩けぇ、歩けえぇっ」と励ましてもらいたい…あのセリフと声をずっと頭の中で再生していこう…,。

 

 

つないだ手が離れていく瞬間や、ワルツを踊っても触れられない、ケンジさんが楽しげにトシさんとワルツを踊る場面でトシさんが離れていった後、ひとりで踊り続けているケンジさんを見て、配信の時より寂寥感を感じて涙が止まりませんでした。

 

イシワラさんの思惑とは違う意味で、トシさんが長生きしていらっしゃったら、女性の活躍に何か影響するものを残していたのではないかと思います。短命だったのは、本当に惜しいです。そのかわり、賢治さんがその想いを作品に込めて残されたので、生きてる間に二人で一緒に何かを成し遂げられなくても、何年も後に影響する宝物を残してくれたのが本当に素晴らしいお二人だと思いました。

 

 

・面白かった、可愛かった瞬間

夜公演?で、始めの方でトシさんがカニさんの頭に手を置く仕草が、ペチンッて音がしそうな手の置き方で笑ってしまった笑

 

 

ホサカさんが登場して、イシワラさんから許可を得て休憩しようとしたら秒で任務を言い始めるイシワラさんの上司っぷり。ホサカさんがんばれ…

 

 

トシさんが女学校から持ち帰った見せたいもの、風呂敷包みを、ケンジさんが開けようとしてトシさんに牽制されるやり取り。昼は、ケンジさんの手をトシさんが両手で上から押さえて、実際に見ると、漫画のビタン!みたいな擬音をつけたくなるような素早いコミカルな押さえ方。押さえられて、あぁぁぁぁって笑顔で言ってるケンジさん。夜は、開けようとしたら風呂敷包みをヒョイっとトシさんが引っ込めるパターン。この時、取ろうとするケンジさんをさらに交わして頭の上に包みを持ち上げたトシさんがめちゃくちゃ可愛かった。笑いながら驚くケンジさんも笑

このやり取りだけでも、ずっと見ていたい‼︎

 

トシさんのセーラー服を初めて見て興味津々なケンジさんも可愛すぎた。座りながら体を折り曲げて机の下からプリーツスカートを見ようとするケンジさん、トシさんが可愛いし、セーラー服どうなってるのか、初めて見るプリーツも気になりますよねわかります笑

 

夜公演で、無表情のトシさんに突然指で左腕をツンツンされて、(えっ⁉︎ぇっ⁉︎笑)って身体仰け反らせ気味になってたケンジさん。

 

トシさんからタゴールさんとの話を聞いて、嬉しさのあまり興奮して突然シカさんに同意を求めて振り返るやり取り。結構笑いのノリが良い客席だから?ホールの大きさに合わせてなのか、ケンジさんの興奮度合いもシカさんの驚いて大きくうなづくのも、おふたりとも表現が大きくなってて面白かった。

 

ケンジさんがイーハトーブの設計図を探しに行くところ、夜公演は2Fから舞台全体が見えていて、上手舞台袖の、結構中の方まで入って走っていって、下手で設計図を差し出して待ってるホサカさんがぽつん…状態、イシワラさんの掛け声もなんとも面白くてホッコリ空間でした。

 

わたくしどもはのところだったかな…、コロスさんたちが下手奥でみんなで集まって座ってる姿が和んだ。ご飯食べてたり、くつろいでる雰囲気が良かった。

 

マリヴロン、クラムボンオノマトペをみんなで言い合ってる時の、トシさんとお花さんが顔を見合って言い合う姿がかわいらしかった♪

 

最後にケンジさんが歌い始める、宮沢賢治さんが作詞された花巻農学校精神歌。トシさんも歌い始めて、夜公演で聴いた時に倫也さんと華さんの歌声がぴったり合って一本になってこれもまた鳥肌が立ちました。そのあとコロスさんたちも入ってきて、イシワラさんがにこやかにその様子を眺めて、ホサカさんもじっと聴き入り、とても美しいラストでした。歌いながらケンジさんが右腕を上げて指揮を始めるのですが、昼公演まで、この曲は三拍子でその一拍目で左右に振り子のように振るゆったりした指揮だったのが、夜公演で三角形を描く三拍子の指揮に変わって、とても軽やかで楽しげな雰囲気の歌に仕上がってました。

 

あと、カーテンコール。昼公演の時、2回目の後すぐに劇場スタッフの方が退場案内の看板を持って舞台上手近くに立っていらっしゃったので、3回目で出てきてくれた倫也さんがおもしろびっくりな表情でスタッフさんの方に視線を向けていたり、華さんの立ち位置が舞台よりだったのを倫也さんにもうちょっとずれて?みたいにうながされて二人で横にちょこちょこずれるのもホッコリした瞬間。夜公演では、華さんも倫也さんも2階席の方まで手を振ってくれました。

追記: 昼夜どちらもスタンディングオベーションでした‼︎ 

 

 

やっぱりこの作品も思うことが、まだたくさんあります。パンフレットも読み応えあって、課題図書みたいな読みたい本も紹介されていたので、ずっと楽しめる作品でした。頭がまとまったら、ポツポツ記録したいと思います。

 

素敵な作品をありがとうございました。

引き続き大阪公演の成功をお祈りします✨