lensdiary

日記。観たもの、聴いたもの、読んだものについて思い浮かんだこと。感想はネタバレを含んでます。

『狐晴明九尾狩』観劇その1

 

(2022.10.11 一部修正)



もし、感想レポを探してこのページを訪れてくださっていたとすれば、感想のような殴り書きはかなり下にあります。興奮のあまり妄想が感想にすり替わってしまい、お芝居の構成を間違えて書いてしまっています。大変申し訳ございません。そのことを踏まえて、期待しないでご覧下さい。

 


結論:今まで見た中で最高のステージに違いないけど、簡単に”最高でした”の一言でくくりたくない3時間でした。

 

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[ これは自分の為の記録 です]
観劇記録の為のメモにしたかった。でも社会状況といろんな人が発したメッセージに自分の感情が深く動かされて何か残したいと思ったのが、2001年や2011年以来の貴重な体験になった。心境の変化を記録したいから、思い出せる限りのことを書いておきたい。



[ 速報発表、チケット確保から東京公演開幕 ]

2021年5月20日

この速報を見つけて飛び上がった。

大阪は春から昨年よりひどい感染拡大が続いていて、近所の施設では数十人が感染、病院へ行くことができずにお亡くなりになられた。自分の仕事は在宅ができない作業のため、変わらず毎日出勤。自治体が実施するワクチン接種は、電話、WEBで予約しようにも全く繋がらない。5月半ばに感染が少し落ち着いていたが、第五波のニュースも流れるなど、不安と恐怖は2020年より確実に増していた。

日に日に身体や気持ちが重くなり何もしたくない。

メンタル下降まっしぐらな時、新感線の速報。

 

中村倫也さんが主演で、安倍晴明役‼

その後見つけた予告動画から、なんとなく演劇界から今度こそやったるぞ!と拳を突き上げてるような意気込みを感じた。観に行くために、自分の生活習慣を整え直す。

 

7月、制作発表のYouTube生配信を見る。

配信日の2日前にワクチン接種をして、副反応でぼんやりしながら見た。いのうえひでのりさん、中島かずきさん、中村倫也さん、向井理さん、吉岡里帆さんから、ワクワクするようなお話がたくさんあって、絶対観に行こうと思った。

 

最後に倫也さんが挨拶で、

『…、無事に』と言われたほんの一瞬に見せた、溜めのような神妙な表情が心にひっかかり、現実的な緊張感が伝わった。観る側は知らない作る方が置かれている状況は、相当厳しい状況と感じた。

 

チケットは本当にラッキーだったというか、先行抽選で大阪2公演分の席を確保。

第五波で緊急事態宣言。

前年と変わったのは、対策可能であれば、収容人数の調整でイベントは開催できるようになっていた。それでも大勢の人がいるハコへ観に行くことを想像すると、まだ少し不安と心配が混ざりあった。新型コロナが日本で拡がり始めた頃、とある宗教学者の方が、今は神仏に祈って治るものではない、医学、科学の専門家の意見を聞いて従うのが最善、とツイートされたのを見て的確な忠告だと思った。

ただ、日常を健全に維持する為の心の拠り所が無くなる恐れが一番大きかった。大切に思う人たちへの心配に囚われすぎず冷静にできることは何か。ほぼ無宗教のようなわたしでも、祈ること以外思い付かなかった。いつも見るTwitterに成功祈願ツイを公演が始まったら書くことにした。この行動自体、そもそもそういうことをする性格じゃないから違和感はあったが、とにかく何かしないと気がおかしくなりそうだった。

9月、東京公演。
前日から公開舞台稽古の動画を見てワクワク。座長さまの 始まるよ。ツイートに思わず拍手したくなる。そして17日、無事に初日開幕。

Twitterで舞台トピックをフォローしていたので、観られた方の感想ツイがTLに流れてくる。みなさん興奮状態。座長さまも初日から楽しんでおられるご様子。

いろんな方の感想を見てるうち、マナー、感染対策ルール守る守らない云々の話でかなり心配が増した。息するようにしゃべる人が比較的多めなオオサカの人を考えると黙ってて下さいとするルールは難しい気がする。でも、あかんことはあかん。

気になる感想ツイを見つけた。プロメアと狐晴明とのマイノリティの扱い方を比較した感想。その方の感想はネガティブな言葉を使って褒めているものだったが、もしかしてなにか失ったりバッドエンドなのか気になった。
その後のお知らせでライブビューイング開催を知る。開催日は仕事の調整が取れない日だったので予約しなかった。内容を知るために手元にあるのは、届いたデカパンフレットと戯曲本だけ。読み込むと思い込みがつくので、さっと流し読み。なのにクライマックスあたりで早速涙が出た。親友どおしの対決話にめちゃくちゃ弱い。これを目の前で中村さんと向井さんで目の当たりにしたら、感情がどれぐらい振り回されるんだろうか。

 

 

緊急事態宣言は10月初旬に解除。昨日今日で一気に感染が止まることはない。まだまだ要注意とのこと。

 


東京公演は無事に閉幕。無事に千穐楽を迎えられたのが嬉しかった。次は大阪。

ここからやっとわたしの感想。


[ 大阪公演開幕 ]
10月27日、大阪公演も無事に開幕とのこと。嬉しい。


買い物以外で出かけるのが久しぶりすぎて、服は決めたが、観劇前の用意をどうしていたか記憶をたどりながら、チケットファイルや双眼鏡をバッグにIN。感染対策の為、チケットのもぎられる方の裏に氏名と連絡先電話番号を書く。


2021.10.30 (土)マチネ 11:30開演
大阪 オリックス劇場
1階 6列 センターブロック上手側


劇場前の公園で、まわりに人がいないことを確認してからマスクを新しいものに替える。入り口で検温、手指をアルコール消毒。足拭きマットで靴裏の汚れを取りながら入場。


上演時間
一幕 1時間10分
休憩 20分
二幕 1時間30分

身体にはちょうど良い長さだと思った。旧厚生年金会館だったことを思うと仕方ないけど、座席が狭目で前後の間隔が広くない。お行儀よく座らないと隣の人にもたれてしまいそうになるなど。


初見の感想は席が舞台と近い距離だったので、キャスト様のめくるめく表現、演出に圧倒された。久しぶりの新感線の爆速テンポと小ネタやアドリブに、これが観たかった!と気分爽快。まるで何回転もするジェットコースターに乗せられて、いろんなものが吹き飛ばされる気持ちになった。


観てる間に思ったこと⬇️

・晴明先生、美、カッコいい、美、カワイイ、アドリブとセリフが無いところの動きが全部面白い、えっ泣く、いやそんなん泣く、いやいやいやいや泣くって!!!結果、意識吹っ飛ばされました。
・利風パイ、立っているだけで儚さと野望ギラギラをスイッチさせる。悪い声がいい。

・タオはカワイイひたむき爆笑、強い!いてくれて良かった。

・ランはアクションカッコいい、カワイイな、素直すぎる、耳‼
・渦雅さま、わたしにはSHERLOCKのワトソン味あるように見えて心意気がカッコ良かった。ずっと晴明先生を守ってほしい。
・悪兵太えーちゃん⁉、スタイル良!働き者。
・道満さま、しぶい強いモフモフ手練れセラピスト

ストーリー進める人が見たい、でも晴明先生の一挙手一投足も見たい、元方院さまも師師さまも近寄さまも将監さまも式神もアヤカシもわちゃわちゃ何してるか気になる、都の町の人もひとりずつ売ってるもの違うとか、アクション始まったら武器も殺陣も見たいし、目が足りない!!!

あっという間に迎えたクライマックス。
パイ、利風、晴明の最終決戦の姿が頭に強烈に残り、こっちの感情と聴覚、言葉まで全部持っていかれた。最後は劇場内全体を包み込むようなとても暖かで、静かな希望を感じさせる雰囲気を醸し出したのが、無重力?別次元?繭玉に包まれたような大きな安心感を感じた。自分に都合が良い感想だけど、多数派も少数派もどんなものも地球上に生きているものは全て、そのままそこにいていいんだよと言われているように思った。劇団が観せたかった意図と違うかもしれないけど、私はこう受け取った。

時間が経つほどにジワーっと涙が出た。

カーテンコールでさらに感動が湧き上がった。


この10年ぐらいで、街の様子が妙な雰囲気に変わったように思っていた。異様な正義感がひろがって、みんな一緒で幸せ感がなんか気持ち悪い。ニュース見るのが嫌になって、精神的にも疲弊して、snsもウンザリ。演劇を観て、久しぶりにちゃんと息ができる感覚が戻ってきた。

退場の順番待ちの間に観たやり取りや声を思い出しながら、生活様式や考え方がはっきり変わりはじめた年に、とんでもなく貴重なステージを体感したんだと気がついて、興奮でぶるぶる身体が震え始めた。

 

観終わって劇場を出た後、何この感覚、なんやったんあの空間 と頭を抱えて、興奮で震えながら地下鉄本町駅へむかったが即帰宅する気分になれず、コロナ禍前によく気晴らしで歩いていた天満橋の川沿いに出て、身体の震えが収まってから帰路に着いた。

 

感染の不安は頭の片隅に少しあったけど、何もしたくなくなるぐらいの閉塞感がすっかり消えていた。